21世紀は光の時代だと言われています。本研究室では、従来の光学の常識を遥かに超えた新材料“メタマテリアル”に関する研究に、実験と数値シミュレーションにより取り組んでいます。
特に、有機半導体や液晶などの様々な有機機能性材料を活用した新たなメタマテリアルの開発に挑戦しています。
可視光のみならずテラヘルツやマイクロ波など、様々な周波数帯域の電磁波を広く対象として研究を行っています。
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IoTによるスマート化が進展する中、電波干渉を防ぐ薄型の電波吸収体の開発が望まれています。
本研究では、Wi-Fiで用いられる2.4 GHzの電磁波を選択的に吸収しかつ、他の周波数の電波は無反射で透過させる電波吸収メタマテリアルを開発しました。
Wi-Fi電波の干渉は防ぎつつ、他の周波数(携帯電話など)の通信は阻害しない電波吸収体として利用ができます。
T. Matsui et al, OSA Continuum (2021).
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発泡スチロール球にニクロム線を巻きつけて試作した電波吸収メタマテリアル
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- 低反射かつ2.4 GHzの電磁波のみ選択的に吸収する電波吸収メタマテリアル(谷口)
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3Dプリンタで作製する光セクショニング顕微鏡に関する研究 |
有機機能性材料によるテラヘルツ・アクティブ・メタマテリアルに関する研究
(大阪大学レーザーエネルギー学研究センターとの共同研究) |
シリコン基板に光照射を行ない十分なキャリアを生成するとテラヘルツ周波数帯域において金属的に振るまいテラヘルツ電磁波の透過の光スイッチングが可能となります。
また、銅フタロシアニンなどの有機半導体薄膜を薄く成膜すると、その効率は格段に向上します。
本研究では、本原理を応用したアクティブ・テラヘルツ・メタマテリアルの開発に取り組んでいます。
T. Matsui et al, Opt. Lett. (2013).
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有機/無機半導体積層構造によるテラヘルツ透過の光変調
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- 塗布型有機半導体材料への拡張(猪瀬)
- 塗布型有機半導体材料への拡張(森)
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ハイパボリック・メタマテリアルによる高効率有機デバイスの開発 |
見る方向に応じて金属的になったり誘電体的になったりする極端な光学異方性を示す材料はハイパボリック・メタマテリアルと呼ばれています。
本研究室では、ハイパボリック・メタマテリアルを活用した高効率な有機デバイスの開発に取り組んでいます。
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スパッタリングにより作製した銀・酸化チタン交互積層ハイパボリック・メタマテリアル
金や銅のようにも見えるのが不思議です。
- 名古屋大学微細加工プラットフォームのスパッタリング装置には大変お世話になっています。(宇佐美)
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PIC-FDTDシミュレーションによる新規テラヘルツ放射デバイスの設計・開発 |
金属グレーティングの近傍を相対論的な速度まで加速した電子ビームを走らせれば電磁波の放射が得られることはSmith-Purcell効果として1950年代から知られています。
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Smith-Purcell効果のPIC-FDTDシミュレーション
本研究室では、様々なメタ表面と電子ビームとの相互作用による、新規なテラヘルツ電磁波放射構造の探索を行なっています。
そのためのPIC-FDTDシミュレーション・コード(C言語)も研究室で開発しました。
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- 電子ビームとグレーデッド・グレーティングとの相互作用によれば、
従来の周期的な金属グレーティングからのSmith-Purcell効果では得られない
広帯域かつ指向性の高いテラヘルツ電磁波放射が得られることを見出しました。(岡島)
A. Okajima, Opt. Express (2014).
- 電子ビームとスプリットリング共振器との相互作用によれば、構造に起因する特徴的な磁気共鳴が得られ、様々な真空電子デバイスへの応用が期待されます。(岡島)
- ビーム状のテラヘルツ電磁波を放射する構造の設計に挑戦しています。(大村)
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量子エレクトロニクス研究室 畑・永井グループとの共同による装置開発も計画しています。
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液晶は薄型ディスプレイの花形として我々の身の回りに深く浸透しています。
しかしそもそも“液晶”とはディスプレイを指す言葉と誤解されがちですが、ディスプレイの中で使われている材料(あるいはその状態)のことを指します。
ディスプレイにおいては液晶の本来有している機能性のほんの一部(光学異方性、誘電異方性)を利用しているに過ぎません。
液晶の本来有している機能を活用した新規な光学素子の開発に取り組んでいます。
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液晶マイクロドロップレットによるフォトニック・ナノジェット生成・制御素子
光の回折限界を超えた超解像イメージングなど、様々な微小光学素子への応用が期待されます。(佃)
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低コスト共焦点顕微光学システム TSUKUDA, TSUKUDA2によるデジカメ画像および共焦点像
光学部品類を組み合わせることにより低コストでレーザー走査型共焦点顕微光学系を構築しました。(佃)
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等方性材料と異方性材料など対称性の異なる誘電体の界面に局在する電磁波は、
その理論的な提唱者の名にちなんで “Dyakonov表面波” と呼ばれていますが、
伝搬損失を受けない表面波としてナノ光回路やセンシング応用が期待されています。
しかしながらその存在条件に対する厳しい制約から、1988年に理論予測がされるもその実験的な観測は未だ数件しか報告例がありません。
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本研究室では、液晶を利用したメタマテリアルによるDyakonov表面波の観測に挑戦しています。
これまでに、銀ナノ粒子を分散した液晶によるメタマテリアルによればDyakonov表面波の存在条件が緩和可能であることを、
拡張されたマクスウェル・ガーネット有効媒質近似により明らかとしてきました。
T. Matsui, APEX (2015).
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液晶メタマテリアルにおけるDSWの概念図
液晶の中でもらせん周期構造を自己組織化的に形成するもの(相)はコレステリック液晶(相)と呼ばれます。
そのらせんの周期が光の波長程度であれば、一種のフォトニック結晶として見なすことができレーザーの共振器(キャビティー)として利用することが可能となります。
本研究室では、コレステリック液晶レーザーの数値シミュレーションに取り組んできました。
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光(電磁波)伝搬を数値的に解析する手法(数値電磁界解析法)として時間領域差分法(FDTD法)は広く採用されています。
FDTD法は光伝播のみを扱うならば十分ですが、レーザー発光の解析においてはゲイン媒質中での光増幅や誘導放出といった非線形的なプロセスも加えて取り扱う必要があり不十分です。
本研究室では、分極の運動方程式や四準位系エネルギー構造におけるレート方程式などの補助方程式(ADE)とFDTD 法とを組み合わせた ADE-FDTD 法により、
コレステリック液晶レーザーの数値シミュレーションに成功しました。
T. Matsui and M. Kitaguchi, APEX (2010).、
松井, 液晶 (2012).
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ADE-FDTD法によるレーザー解析の概略図
実効屈折率が大きく変調可能なテラヘルツ動的メタマテリアルの開発
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メタマテリアルのコンセプトにより、負の屈折率、非常に大きな屈折率、ゼロ近傍屈折率など、天然の材料では実現不可能な光学材料が様々開発されてきています。積層閉リング共振器アレイを活用すれば、実効屈折率を大きく変調可能な動的メタマテリアルが実現可能であることを見出しました。(渡邉)
Y. Watanabe et al., JPE (2018).
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積層閉リング共振器アレイによる実効屈折率が大きく変調可能な動的メタマテリアル
導電性高分子ソフトアクチュエーターによるテラヘルツ動的メタマテリアルの開発
(総務省SCOPEによる委託研究(H28年度))
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導電性高分子によるソフトアクチュエーターを活用した動的テラヘルツメタマテリアルの開発に挑戦しています。(浅野、木下)
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積層閉リング共振器アレイの共鳴応答(表面電流)
フリースタンディングなスプリットリング共振器アレイ
磁気弾性メタマテリアル・導電性高分子アクチュエーターによるチューナブル・メタマテリアル
(オーストラリア国立大学非線形物理センターとの共同研究) |
複数のスプリットリング共振器(メタ原子)が近接場相互作用すればメタ分子として振る舞い、
分子系における結合性・反結合性分子軌道に類似したモード・スプリッティングにより、同相・逆相のループ電流に対応した対称・反対称モードが現れます。
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メタ原子・メタ分子の概念図
磁気弾性メタマテリアルによる
EIT analog |
メタマテリアルを用いれば、本来は量子光学的な効果である電磁誘導透明化(EIT)現象に類似した効果を古典的な系で模擬可能(EIT analog)であることが知られています。
本共同研究グループは、磁気弾性メタマテリアルと閉リング共振器との組み合わせにより入射電磁波によりチューナブルな EIT analog の観測に成功しました。
T. Matsui et al., APL (2014).
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磁気弾性メタマテリアルと閉リング共振器によるEIT analog
チューナブルなスローライト・デバイスへの応用が期待されます。
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導電性高分子アクチュエーターによる
チューナブル・メタマテリアル |
導電性高分子アクチュエーターによるチューナブル・メタマテリアル